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* 手書き旅2 南極編 (前半) [#ab326dc9]
* 手書き旅2 南極編 (後半) [#jf226f7c]

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 お待たせいたしました
 瘴鶴・髄鶴手書き旅 第2回 南極編です
 旅行日程が長いため枚数も多くなりますがご容赦ください
 最後までご覧いただけると幸い
 疑問・質問等があれば貼り終わった後にできるだけお答えします
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 5日目も波乱の幕開け
 当初予定していたオルネハーバーへの航路が、強い北風で運ばれた流氷で閉ざされてしまったそうです
 そこで予定を前倒しし、ウィルヘルミナベイのクルーズ等に変更されます

 出演:瘴鶴・髄鶴・他
 ナレーション:れんそーほーちゃんでお送りします
 「予定変更はいいですが、移動時間のおかげで午前の行動時間が短くなってしまいましたね」

 「相手は雄大な自然だから悔やんでも仕方ないずい
 それよりもこの時間を大切にいっぱい楽しむずいよ!」

 「おや、髄鶴らしからぬ殊勝な考え方ですね、偉いですよ」

 「ずへへ、それ程でもないずいよ
 それはそうと、なんでこんなに複雑な形状になるずい?」

 「そうですね、あちらに説明にいい場所がありますから行ってみましょう」




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 「ずい達は今、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス観光を終えて最南端の街ウシュアイアへと向かっているずい
 大人が丸ごと入れる程大きいキャリーケースと手荷物用リュックサックに、
 10日分の着替えと防寒着などにカメラやノートパソコンを入れて準備万端ずい
 到着したら軽く観光と食事をしてお船に乗り込むずい!
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 「昨日も似た場所がありましたが、このように陸地に降った雪が斜面等を滑り落ちながら圧縮されるのです
 そして重みに耐えかねて海に崩れてしまったものが、氷山や流氷となるわけですよ」

 そうそう隣の黒いのは手荷物扱いで旅費を浮かせたずいよ…」
 「こうずいか? こうずいね?」



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 半袖姿で飛行機に乗り込んだものの、こちらに着いたら肌寒い
 それもそのはず周囲の山々は雪を冠していました
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 「あそこの雪壁も美しいですねー、形がほとんど崩れずに割れてますよ
 辺りを漂う細かい氷同士がこすれる、カラカラ、シャラシャラという音も素敵です」

 「綺麗な街ずいね~、行った事ないけどスイスとか北欧って感じがするずい」
 「あの程度で殴るなんて姉の風上にも置けんずい」

 「この街は南米大陸の南端にあるフエゴ島という所にありまして
 南極クルーズはもちろんの事、パタゴニアやフィヨルド観光の拠点としても栄えているんですよ」


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 「向こう側にはずい達の他にもでっかいお船がいっぱいずいね
 通りに面したお店は土産物屋か登山用品店が多かったずい
 トレッキングツアーなんかも人気だから需要があるずいね」
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 「こちらの氷山も非常に面白いですよ」

 「横倒しになったエリンギみたいずい」

 「この氷山は元々、向かって右側の1割ほどが海面に出ていたんでしょうが
 溶けたり割れたりとバランスを崩してこのようになってしまったんですね」

 「氷山の一角って聞いたことあるずい!」

 「こういった不安定な氷山は、いつ回転してしまうか分かりませんので絶対に近づかないようにしましょうね
 下から突き上げられたリ、波で転覆する恐れがあるんですって」

 「ずいは飛んで逃げるから平気ずいよ」




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 乗船後まもなく船内・船外の施設案内と、救命胴衣を着用しての避難訓練が実施されました
 夕食後には南極ツアーにおける説明会に出席です
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 本日のお昼ご飯は、船上でのバーベキューパーティー
 グリルで豪快にお肉を焼いて貰い、色とりどりの副菜とともにいただきます

 「ラウンジに医療室・売店・サウナまであったずいねぇ、有料だけど頼めばお洗濯もしてくれるずい」
 そして午後からはエンタープライズ島へ上陸しましょう

 「出発前にもある程度説明を受けて来ましたが、先ほどの船内説明会でもいろいろ知れましたね
 まぁそれは追々語るとして…もう夜ですか、辺りが真っ暗ですよ?」
 「ここはフィヨン湾と言って、スウェーデンの捕鯨船ガバナー号が残された観光スポットなんです
 この船体をはじめ、鉄製のコンテナやさびた銛・クジラの骨など、かつてこの島を拠点に捕鯨を行っていた痕跡がこの島にはいくつか残されています」

 船はまもなく南極圏へと向けて出港しました




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 「ずいは甘く見ていたずい…
 あらかじめ『ドレーク海峡は世界一荒れる海』と言われて覚悟はしていたずいが、これほどとは思ってなかったずい!
 空も海も灰色で、甲板は波に洗われ飛沫(しぶき)が窓を雨のように叩きつけるのずい
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 「いいですよぉ~可愛いですよぉ~」

 ご飯食べに行こうとしたらまともに立っていられなくて、何かにつかまらないと移動できんずい
 食事中に椅子に座ったおばあちゃんが椅子ごとスライドしたのは忘れられんずい
 食器は滑らないようになってるずいがスープが飲みづらくて仕方ないずい
 窓から見える景色が振り子かシーソーのようにぐわんぐわん動くずい
 「こっち向いてずい! いいポーズずい、素敵ずい!」

 その後は揺れが激しくて食欲なんかなくなって、強い酔い止め飲んで1日中寝てるしかなかったのずいよ
 でも横になったらなったで、揺れに合わせて頭と足が交互に壁とかに軽くぶつかるずい…」
 「しかしこのウェッデルアザラシさん、逃げるそぶりを見せませんね
 それどころか、カメラを向ける我々にポーズすら付けてくれるサービス精神旺盛な子です」

 早朝から夜中まで1日中揺れっぱなしで、日中は食事もとらずに臥せっていた記憶しかありません
 「愛想のいい子ずい、観光客慣れしてるずいかね?」



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 ツアー3日目、1日半をかけて南米から南極圏へと到達しました
 目が覚めると揺れはすっかり収まっています
 外の景色に驚いて急ぎ甲板へ出てみると周囲は一面の氷に覆われて居るではありませんか
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 夕食後、希望者のみがボートに乗り込みポータルポイントという所へ上陸しました
 ここは今までの上陸地と異なり、末端部ではあるものの南極大陸の一部なのです
 我々は今夜だけここでキャンプをして野外で眠ります

 「髄鶴見てみなさい、流氷と大きな氷山ですよ!」
 「髄鶴、もう雪は踏み固めましたか? しっかりと固めないとちゃんと眠れませんよ」

 「ホントだずい…ずいは初めて生の流氷をみたずいよ!
 氷山はなんだか青白いずいねぇ、こんなのに出会えるなんてずい達はとても運がいいずい」
 「雪が深いし柔らかいから結構な労力だったずいよ
 瘴鶴姉ぇこそおトイレ大丈夫ずいか? いつもみたいに漏らしたら恥ずかしいずいよ」

 「船長さんによるとこの時期にこの位置でこれだけの流氷群と出会うのは10年ぶりだとか
 何にしてもとりあえずは上着とカメラを取りに、一度部屋に戻りましょう…」
 「失礼な! 出発前に船内で済ませましたよ! いざとなれば先ほどガイドさんが設置してくれた簡易トイレにしますし」

 「ゾディアックに積んでたあれずいね…あれはちょっと恥ずかしいずい、そこら辺で済ましちゃダメずいかね?」

 「南極はその気温の低さと陸地の少なさ故に、バクテリアが少ないんです
 それに以前も言ったように、変な病原菌の媒介を防ぐためにもしっかりと守りましょうね」



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 「すげーずい…流氷をかき分けて進んだ航跡が綺麗ずいね」
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 「しかしこんなに眠いのに、まだ明るいずいなぁ…でも時計は23時になってるずいよ…壊れちゃったずい?」

 「この船は耐氷船ですから多少の流氷は問題ないのですが…
 砕氷船ほど丈夫ではありませんのでこれ以上進むのは難しいようですよ?
 このままだと氷に閉じ込められてしまう恐れがあるのだとか
 現在船員さん達が対策を協議をしています」
 「それは白夜(びゃくや)だからですよ」

 「せっかくの南極ツアーが台無しずい? ずいはなんて運が悪いのずいか…」
 「百夜ずいか?」

 結局予定通りの進路を航行するのは困難と判断され途中まで引き返して別の観光ポイントへ向かう一行
 そのおかげで途中ザトウクジラの群れに遭遇し、ホエールウォッチングを堪能できたのでした
 「いいえ、それは1日中暗い状態が続く冬の現象ですね、白夜はその逆です
 太陽がずっと水平線近くを回っているので常に明るいのですよ」

 「だから綺麗な夕焼け見た時はあんなに眠かったずいか!」

 「今の時期だと、太陽が水平線より下に沈むのは午前2時~4時頃の2、3時間だけですね」

 「こんなに明るい中で眠れるずいかなぁ…ずいはテントで寝るずい…瘴鶴姉ぇは寝袋希望してたずいね、寒く無いずいか?」

 「顔は多少冷たいですが中は暖かいですよ、せっかくの機会ですからね、南極の空気を感じながら眠りにつきますよ」

 「それじゃぁ、おやすみずい」



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 午前は移動に費やされましたが午後はボートによるクルージングです
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 幸いな事に夜間の風は穏やかで、知らぬ間にぐっすりと眠いっていたようです
 寝袋から這い出して本船へ戻り、すぐに身支度を整えます
 6日目の午前は、シエルバ・コーブのクルージングへ出発です

 「これがゾディアックボートずいか?」
 「この入り江も実に美しいですねぇ、正面の島にはアルゼンチン基地が見えますよ!」

 「このボートはとても分厚く丈夫で、竹のように節のあるゴムの筒をU字に曲げた構造になっています
 ですので1か所が破れてもボートが簡単に沈むことはないのですよ」
 「確かに綺麗ずいが…その…ちょっと飽きて来ちゃったずい
 毎日、雪と氷に海と空ばっかりで、だんだん感動が薄れて来ちゃったずいよ…」

 「なんだかマンハッタンみたいで、ずいはお気に入りずいよ!」

 「ちなみに備え付けの青い容器は簡易トイレです
 『南極には何も持ち込まない・何も持ち帰らない』と南極条約で定められていますのでタバコやゴミはもちろんの事、し尿もすべて南極圏外まで持ち帰る義務があるのです」

 「…今しなきゃいけない話だったずいか…?」

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 「贅沢な悩みですが、気持ちはわからなくもありません
 私も少し変わった氷山に目が行きがちですからね
 カメラを構える頻度も減ってきた気がします」




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 さっそく着替えてライフジャケットを着こみボートに分乗します
 ボートの中に座るのではなく筒状の部分に腰かけてみんなが内側を向くように座ります
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 「でもこういう息を飲む美しさには、まだまだ心踊らされるずいよ…」
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 「こんなのも好きずいな
 どうやって溶けたかとか、元はどんな形だったか想像するのが楽しいずい!」

 「ふーん…思ったより大きな船ね…ふーん」

 「全長100mちょっとで船員を除いて100人くらい乗れるんだって
 横幅が少し広いけど全長はボク達Z1型とほぼ一緒だね」



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 初めての船外行動はメルチョール群島沖のクルージング
 分厚い雪に覆われた島と水面に漂うたくさんの氷塊が出迎えてくれました
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 「髄鶴、ヒョウアザラシが居ますよ!」

 「瘴鶴姉ぇ~南極って思ったほど寒くないずいねー」
 「あんまり可愛くないお顔ずいね」

 「そうですねぇ、南極の映像というと猛吹雪の中で互いに温めあう皇帝ペンギンとかの画が思い浮かびますからね
 しかしあれは7月以降の真冬ですし、今は12月半ばで初夏にあたりますから外気温は+5度~-5度くらいでしょうか」
 「あのアザラシさんはなんと肉食で、ペンギンや他のアザラシを食べてしまうんです、シャチを除けば南極圏最強の動物に挙げられるほどです」

 「日本の冬のスキー場くらいの寒さずい
 でもボートで移動してる時は、風と水しぶきが冷たくて鼻水でちゃうずいね…」
 「アザラシってお魚食べるイメージだったずい…」

 動きやすさを考えてもこもこのスキーウェア等は避けて撥水性のある薄手の登山用ウィンドブレーカー(ゴアテックス)を選択
 フリースやタイツ・ウォームソックスなどのインナーをしっかり着用すれば寒さに対処できました
 「他のアザラシと違ってあごが大きく、陸上の肉食獣のような頭骨をしています、可愛くないと感じるのはそのせいかもしれませんね」

 「ずいっ? 氷の上になんか居るずいよ!」
 「でも人間やずい達は平気ずいよね?」

 「いいえ、人間と出会う頻度は多くないでしょうから、彼らにとっては『大きめのペンギン』程度にしか認識していないかもしれません
 気を付けましょうね」





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 「これはカニクイアザラシさんですね」
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 本船に戻り昼食のラザニアを頬張っていた我々は、船内放送を聞いて甲板へと急ぎます

 「朧のカニが危ないずい?」
 「またザトウクジラさんずいか? いちにーさんしー、4頭もいるずいよ!
 写真じゃ追いきれないからデジカメの動画機能で撮るずい」

 「それがこのアザラシさんカニは召し上がらないんだそうですよ
 歯がサンゴみたいに結構ギザギザしてましてそこでオキアミを濾しとるみたいです」

 「へぇ~なんでこんな名前付けたずいかねぇ
 それにしても気持ちよさそうに日向ぼっこしながらお昼寝してるずい」



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 「透明のでっかい氷塊だずい! 今まで見かけた事のないタイプずいよ
 えーと…海氷とか雪氷がなんとかって聞いたけど忘れちゃったから、あとで瘴鶴姉ぇに説明してもらうずい!」
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 午後からはトリニティー島へ向かいました
 ボートのエンジン音に驚いて、イルカのように海面を跳ねながら移動するペンギンの群れがを見ながらの上陸です

 「ここも大きな島ですねぇ、ほら丘の上にペンギンがあんなにたくさん
 浜辺にもいろいろ転がってますよ…」

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 「髄鶴これを見なさい、ガイドさんがちょうどいい欠片を拾ってくれましたよ
 船に持ち帰ってこれでオンザロックと洒落込みましょう」
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 「これ、クジラさんの骨ずいね…木製の小舟もボロボロずいな」



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 短い時間でしたが、船上からとはまた違った美しい景色やボート移動の疾走感などを堪能できました
 そして一部のお客は南極の氷を使ったお酒も堪能しておりました
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 「ここもジェンツーペンギンさんばっかりずいねぇ
 ずいは、もっと他のペンギンさんも見たいずいよ?」

 「いいれふかじゅいかく? とうめいなこーりはめじゅらしいんれすよ(以下略)」
 「本当はもう数種類出会えるんですが、南極に住むペンギンのなかで暑さに強くて繁殖しやすいのがこのジェンツーさんなんですよ
 時期的・場所的に他のペンギンさんは珍しいんです」

 訳:(いいですか髄鶴? 透明な氷は珍しいんですよ
 ほとんどの流氷は雪が圧縮されてできた雪氷と呼ばれるもので気泡を含んでいます
 透明なものは雪解け水が固まってできたか、海の水がそのまま凍ってできたかなんだそうですよ
 氷に閉じ込められた気泡は有害なガスである場合もあり得るので、飲用には適していないんです)

 「もうそれくらいにしてお部屋に帰るずいよ」



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 4日目の午前はチリの南極基地のひとつであるゴンサレス・ビデラ基地へ向かいました
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 「髄鶴見なさい!
 ほら、あそこの雪の上にうずくまってる黒い塊です!」

 「んほぉぉーー! ぺぺペンギンさんだらけじゃないですか!」
 「あっ顔を上げたずい
 真っ黒で小さくて、くちばしも短いずいね」

 「いっぱいずい、可愛いずい、とことこ歩いてるずい!」
 「アデリーペンギンさんですよ!
 目元が私そっくりで、とっても愛らしいですよね」

 「小さな島ですが、あっちにもこっちにもコロニーがたくさんあるんですねぇ
 雪の上で寝そべってたり浜でウロウロしてたり浅瀬を泳いでるのなんかもいますよ」
 「他に仲間が見当たらないずいよ…迷子ずい?」





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 「白い眉毛?に朱色のくちばしだから、確かジェンツーペンギンさんずいね
 丸々してて可愛すぎるずい…ちょっとひと撫で」
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 「静かに、そーっとこちらへいらっしゃい」

 <<ピリリリリー!>>
 「待ちなさい愚妹! 気持ちはわかりますが『野生動物とは5m以上の距離を取る』という南極条約に基づいたルールがあったでしょう、こちらから触れるのも当然厳禁ですよ!
 「このアザラシさん、歌うようにキュウキュウ鳴いてるずいよ…?」

 相手は人慣れした愛玩動物ではありませんからお互いに怪我をしたりさせたりする危険性もありますし、通路や巣などの生活圏を何気なく破壊してしまいかねません
 万が一南極に存在しない病原菌を接触感染させてしまったら大変です、節度を持って眺めるだけにしましょうね」
 「寝言なんでしょうか、まぶたや手足が小さく動いてますから、ひょっとしたら夢を見ているのかもしれませんね」

 「分かりましたずい
 ずいはいい子だからペンギンさんのお邪魔はしませんずい」

 「偉いですよ髄鶴…ただ例外として、向こうから近づいて来た場合や近くを通行しなければならない場合などは仕方ありません」

 「じゃぁ足元に寄って来るまでずいは動かんずい!」



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 「それにしてもそこら中に居ますねぇ、よそ見してたら踏んづけてしまいそうですよ
 手をパタパタさせたり、首を起用に曲げて毛づくろいしたりと動作のひとつひとつが愛らしいです」
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 7日目の朝、船はデセプション島へたどり着きました
 ゆっくりと慎重に、島の間をくぐり抜けます

 「あの建物横にある広場はなんずいか? ちょっと見てくるずい」
 「この辺りは雪がほとんど見当たらんずいな? 岩肌の色もなんだか茶色っぽいずいよ
 瘴鶴姉ぇ、ここは何ペンギンが住んでるずい?」


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 「石を盛って作った巣で卵を温めてたずいね、これなら卵が転がらなくて安心ずい!
 ペンギンさんは雪の上には巣を作らないってガイドさんが言ってたずいがホントにそうずいな
 辺りを見渡しても、コロニーがあるのは地面が露出したところだけずい
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 「愚妹よ、あの浜辺を見なさい」

 …さっきから見てると、他の巣から石を奪って自分のところに積んでるずいよ?
 あっちはそれでケンカしてるずい!
 「ずい…なんか白いもやが立ってるずいな」

 みんな卵を大事にしてるずいねぇ…これもずいずい鳥に返した方がいいずいかなぁ」
 「あれは湯気なんですよ
 なんとここデセプション島は、温泉が楽しめる場所なんです!」

 「南極なのに温泉ずいか!?」

 「驚くのも無理はありません、この島は活火山のカルデラ部分が水没したものなんですよ
 その狭い切れ目から内湾へ、船を滑り込ませて停泊しているんです
 ともかく、水着を中に着て上陸しましょう!」

 「巨大なマンハッタンはここにあったずい…!」





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 「ふたりがペンギンに夢中になってるからお利口なづらが解説してやるづら
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 「ずいしょ…ずいしょ…これは重労働ずいね…
 でも分かったずい、活火山で地熱が高いから、こうして浜辺に水たまりを作るとすぐに温水プールになるずいな!」

 この基地は建物がいくつかあって結構広いづらが、そこまで設備が整ってないから夏の間だけ職員が滞在してるみたいづらよ
 基地内には郵便局もあってここから手紙もだせるづら
 用意してた絵葉書とお金(米ドル)持って行ったら、ちゃんとここの消印で日本まで届いたづらよ~
 「そろそろ掘れましたか? 私が一番風呂ですよ!」

 こういった基地は、領土主張目的・観測目的・過去の捕鯨やペンギン漁の名残拠点などで各地に点在しているづら
 当のチリも大陸の一部に対して領土主張してるづらよ
 でも現状南極大陸はどこの国の領土でもないというお約束になっているづら」
 「さっさと掘るですって!」

 深さは僅か20cm程度、温度は30度前後で温泉とは程遠いものでしたが
 水着姿で上半身は寒風に震えながら、砂だらけのぬるい海水につかるのも悪い体験ではありませんでした






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 「初めての上陸で長靴が汚れちゃったずい
 地面の茶色いのは全部ペンギンさんの糞だったずいもんね」
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 温泉で温まるついでに、南極の海での海水浴にも挑戦
 流氷だらけの海よりはマシですが、水温はさして高くありません

 「基地のある島にボートで近づく途中から結構香ばしい臭いが漂ってましたからね
 当然これらを南極圏外に持ち出すことを防がねばなりませんので帰船後はすぐに洗いますよ」
 「ずぃぃぃぃ~! 痛いずい!
 寒いとか冷たいとかじゃなくて、体が痛いずいよ!」

 「逆さに設置してあるブラシに靴底をゴシゴシずい
 よく洗ったら洗浄液入りのたらいに靴ごと足を入れて完了ずいよ!」
 「ででででででです、ですすすですってててて」

 「靴は半屋内のリネン室に干して保管します、絶対に船室内に持ち込まないようにしましょうね
 ところでその怪我はどうしたんですか?」
 「そ、そういえば私風邪気味だったんでした、ゴホンゴホン
 いやー残念ですねぇ、ゴホン」

 「なっなんでもないずいそこで転んだだけずい」
 「うぅ…10秒くらいしか耐えられんかったずい
 1分も浸かってたら死んじゃうところだったずいよ…」




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 午後からはクーバービル島周辺クルージングのあと、上陸して散策です
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 南極最後の船外活動は、ハーフムーン島散策で締めくくり
 上陸した我々を、新しい仲間が出迎えてくれました

 「この辺りは大きめの島がいっぱいあるずいねー」
 「ご覧なさい髄鶴、『チンストラップペンギン』和名をヒゲペンギンさんと仰います」

 「あの島の斜面は、流氷や氷山が発生する仕組みを説明するのにちょうどよさそうですね
 コホン、髄鶴いいですか?」
 「お名前通り、あごの下に紐のような髭のような模様があるずいな」

 「そんな事は後にして、ボートで近づいてみるずいよ!」
 「カラフルではありませんが、おしゃれさんですよね」

 「…」



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 「うひゃー凄いずいな、これ見るずい
 10m以上もあってまるで雪壁ずい」
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 「この島はチンストラップさんの大きなコロニーがあるんですよ
 ジェンツーさんよりやや小柄で気が強く、あちこちで鳴いていますね」

 「上向いて羽をパタパタさせて威嚇してるみたいずい」

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 「こちらもすごいですよ
 今にも崩れ落ちそうな雪塊があります、高さは15m近いでしょうかね
 危険ですのであまり近づいてはいけませんよ」
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 この島を一望するために、サラサラの新雪を踏みしめて小高い丘に登ります

 「ほら、まだまだ先は長いですよ
 アザラシさんの写真はほどほどにして、キリキリ登りなさい」

 「この図愚姉っ! マンハッタン1個じゃ安すぎたずい」

 「しかし運び方に愛がありませんね、もっと背負うとか他に方法があったでしょう」



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 「まさしく半月島ずいなぁ、大変だったけど登ってきて正解だったずい
 登山中の雲も綺麗な半月型で運命を感じたずいよ」

 「ほほぅ、こんなところに苔が…」

 「愚姉はほっといてずいはこの島を満喫するずい!」




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 「病城…この氷山もとても綺麗ね…」
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 「島を離れてから1時間くらいですかね? もう陸地がうっすらとしか見えませんよ…」

 「はい姉様! でも負葬姉様には及びません」
 「あれ見るずい、あそこにでっかい氷山が浮いてるずいよ
 こんな沖合にポツンとあるなんて珍しいずい…これで見納めなのずいなぁ…
 きっとずい達を見送ってくれてるずい!

 「まぁ病城ったら…あら、表面がでこぼこしているけれど、なんだか滑らかね…?」
 瘴鶴姉ぇ、泣いてるずいか…?」

 「えぇ姉様、これは氷山が反転して海中に沈んでいた部分が上に来たそうですわ
 表面のでこぼこは気泡が当たって溶けた痕なんだそうです」

 「さすが病城は博学ね…」


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 「なんだか物悲しいですね」

 「もうこれで南極おしまいずいか?」

 「あとはウシュアイアまで船の上ですよ…」

 「本当に帰っちゃうずいね…飽きたなんて言わずに、もっと楽しんでおけばよかったずい…」

 最後の氷山に別れを告げて、船は北北西へと進路を取ります



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 この日の海はまるで波がなく完全な凪状態でした
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 8日目、9日目は船内のプレゼンテーションルームにて、これまで我々を導いてくれたガイドの皆さんがそれぞれの分野についての講演会を開いていました
 とにかく時間があるので、昼間から甲板でお酒を飲んだり、掲示スペースを改めて眺めたりとのんびり過ごします

 「雲が水面にくっきり映ってるずいな…まるで鏡ずい」
 「ちょくちょく確認してたずいが、まとめて見るとたくさんの動物さんを観察できてたずいね
 ペンギンさんとかもずい達が見てないだけで、他の人は見てたっぽいずいな」

 「髄鶴はテーブルクロスやシーツで遊んだことありませんか?
 布の端をパタッってはためかせると、小さな膨らみが手前から向こう端までスーッと動いていく感じの」
 「クジラやアザラシもたくさん出会えましたよねぇ
 これ以外にもカモメなどの鳥類系は用紙2枚分くらいありましたよ」

 「あるずいあるずい!」
 「名前見ても全然ピンとこなかったずいな」

 「ボートが進むと波が立って、海面がまるで巨大な1枚の布のようにうねる様は水とは思えない質感でしたね」

 「あれはすごかったずいよ…あんなの初めて見たずい
 …ところで瘴鶴姉ぇ、そこで何してるずい?」
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 ウシュアイアへ帰港を明日の朝に控えた9日目の夕刻
 船内では船長も参加してのパーティーが開催されます

 「決まってるじゃないですか、こうして可愛い妹の影となって見守っているんですよ」
 本来であれば8日~9日朝にかけて、魔のドレーク海峡を越えなければなりませんが
 非常に幸運なことに帰路のドレーク海峡は、船長をして『ドレーク湖』と言わしめるほど穏やかに航行できたのです
 おかげで皆、穏やかにパーティーを楽しむ事が出来ています

 「とっても美味しそうですね、やまとこれ好きです」




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 氷山の合間を縫ってクーバービル島に上陸です
 船着き場は無いので、ボートから飛び降りるように浅瀬へ降りますので、膝まである長靴にして正解でした
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 「す、少しくらい分けてくれてもいいじゃないですかっ」

 「相当大きい島ですね、石の海岸線にもジェンツーペンギンさんがたくさん居ますよ
 日向ぼっこしたり、海に入って行ったり、我々に対して物怖じしませんね髄鶴?
 はて、髄鶴はどこ行きましたか?」
 「このお船アイスケーキは全部やまとのですっ!」

 「瘴鶴姉ぇー! こっちずいよー!」
 「仲良く食べるずい」




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 「上陸したら雪の丘に筋が見えたから気になったずい、これは全部ペンギンさんの道だったずいねぇ」
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 入港まであと数時間
 南極旅行の余韻に浸りながら、ラウンジで夜明けを待っていた我々は南米のビーグル水道をゆっくりゆっくりと進んでいました

 「雪上の獣道とでも言ったところでしょうか
 ここでも地肌が露出したところに、みっしりと集まってコロニーを形成してるんですね
 この丘はまだ浜辺から近いですが、島の反対側までペンギン道が続いていましたよ」
 「美しいずい…」

 「短いあんよでたくさん歩いて大変そうずいな…
 さっきも人間の足跡をを飛び越すのに苦労してる様子が、可哀想だけど可愛かったずいよ」
 「ほんの数分前まで紺色のシーツのようだった海面が、あっという間に朱に染まりましたね」

 「眠いの我慢して起きてて正解だったずいよ」

 「この感動を正確に表現する言葉がありません…」




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 船に戻って数時間
 夕日で雲が桃色に染まりだしました
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 「この水道を抜ければウシュアイアですよ、髄鶴楽しかったですね」

 「髄鶴! あれをご覧なさい、素晴らしいですよ」
 「ずい! 別世界すぎて、まるで夢でも見ていたかのようずい」

 「ずいは疲れてもうおねむずいよ…」
 「ぜひまた行きたいですね」

 「早く目を開けてしっかりと見なさい!」
 「…ずいは…少なくとも今はその気はないずい」

 「おや、やっぱり飽きましたか?」

 「そうじゃないずい! …ずいは南極という特別な場所に身を置いてみて、あそこは観光地ではないと痛感させられたんだずい
 また行って楽しみたいという気持ちよりも、気軽に足を踏み入れてはいけない世界だって思ってしまったずいよ…」

 「髄鶴…よい経験ができましたね」




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 「大自然はこうも美しいのですね…」
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 「はー、ほんとに戻ってきちゃったずいなぁ」

 「…ずいは…ずいはもう言葉がないずい」
 「えぇ、久しぶりに土の地面を踏みましたね
 次はどこへ旅に出かけましょうか」

 「今度は暖かいところがいいずいよ!」

 おしまい




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 おまけ
 
 南極旅行準備(実体験)

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[[手書き旅2 南極編 (前半)]]&br;
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